Dev:JA/Ref/Release Notes/4.30/grease pencil

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元記事:Grease Pencil - Blender Developer Documentation

Blender 4.3: グリースペンシル

グリースペンシルが書き直され、困難な制限の撤廃と、全体的なパフォーマンスの改善が行われました。

新機能

この書き直しの焦点が互換性と Blender 4.2と同等の機能である一方、このリリースにはいくつかの新機能が登場しました。

Layer Groups(レイヤーグループ)

Layer Groups(レイヤーグループ)は、レイヤーをまとめる新しい方法の一つです。グループ内のすべてのレイヤーの可視性、ロック状態、オニオンスキニングを簡単に切り替えできます。また、カラータグを使用し、カラーコード化も可能です。 詳しくはマニュアル(英文)をご覧ください。

グリースペンシルレイヤーツリー

ブラシアセット

他の Blender の領域同様、グリースペンシルもブラシアセットシステムを使用するようになりました。詳細はリリースノートをご覧ください。

ブラシをブラシアセットライブラリに追加する時、ブラシをアセットとしてマークし、ユーザーが設定したアセットライブラリ内の、単一の .blend ファイルに格納する必要があることに注意してください。

アセットシェルフ内のブラシアセット

Draw(ドロー)ツールの変更

ドローツールの挙動が更新されました。

  • Radius Unit(半径の基準): Blender 4.2では、グリースペンシルのブラシのサイズに「ピクセル」を使用していました。この単位は "Strokes Thickness"(ストロークの幅)のデフォルトが「ワールド空間」であったため、ブラシのサイズが Blender 単位(デフォルトの「メートル」など)に実際には変換される物という誤解を招いていました。
    Blender 4.3では、ユーザーがブラシの Radius Unit(半径の基準)View(ビュー)または Scene(シーン)に設定できるようになりました。View(ビュー)の場合、ブラシサイズは現在のビューと相対的なピクセル数になり、Scene(シーン)の場合はシーンの Length(長さ)の単位で決まります。デフォルトでは、このオプションはメートル単位です。

  • Spacing(間隔): Blender 4.2では、これは Input Samples(入力サンプル数) と呼ばれ、サンプル間にポイントを増やすのに使用されていました。4.3ではこの設定は Spacing(間隔)と呼ばれ、現在のブラシサイズとのパーセンテージで決まります。
    例えば、この間隔が100%に設定されている場合、ドローツールはポイント毎に次のポイントへほぼブラシサイズ一つ分、離すようにします。この設定が50%の場合は、各ポイントと次のポイント間の距離がブラシサイズのほぼ50%(もしくは1/2)になります。

    • 重要: 間隔が非常に小さい(50%未満)の時、ブラシツールのパフォーマンスが低下する可能性があります。絶対にポイントを増やす必要があるでなければ、この設定を100%のままにすることをお勧めします。
  • Active Smooth(アクティブスムーズ): アクティブスムーズアルゴリズムが書き直され、インタラクティブなカーブフィッティングアプローチを元にするようになり、「浮いている」感が減り、より精度が向上した感じになりました。Active Smooth(アクティブスムーズ)設定は、元のサンプルにどれだけ忠実・近くカーブフィッティングを行うかをコントロールします。大きな値でよりスムーズになりますが、ラインが正確ではなくなります。

ドローツールの Advanced(詳細設定)パネル

  • スクリーン空間の Simplify(簡略化): Blender 4.2では、ドローツールの Simplify(簡略化) 設定は現実世界の距離を基準としていました。つまり、違うスケールやズームレベルでの挙動が全く異なる物になっていました。これを解決すべく、この設定をピクセル数を基準にしました。大きな値でより多くのポイントが削除されます。

Simplify(簡略化)設定がピクセル単位に

  • Blender 4.2では、ドローツールは一時的なストロークバッファを使用しており、ペンのリリース後に時々ストロークが(メッシュの後ろなどに)「ジャンプ」していました。4.3では、ドローツールは正しい位置のドローイングに直接ドローするようになりました。

Eraser(消しゴム)ツールの変更

消しゴムがストロークを「カット」できるよう書き直されました。単にポイントを削除するのではなく、消しゴムの端の交差も正しく解決し、そのストロークに新しいポイントを作成するようになりました。Soft(ソフト)消しゴムもこれを行いますが、複数のレベルの透過を消しゴムの中心から外側に向かって放射状に行います。

ジオメトリノード

グリースペンシルがジオメトリノード内で対応されました。詳細はリリースノートのジオメトリノードのページをご覧ください。

フィルツールのグラデーション

Fill(フィル)のグラデーションを編集する新しいツールが追加されました。Edit Mode(編集モード)中の、ツールバーの Interpolation(補間)ツールの下にあります。ユーザーはフィルのグラデーション(マテリアル設定内で設定)を、フィルストロークの選択後に Gradient(グラデーション)ツールをクリックしてアクティブにし、ドラッグすることで変更できます。(1b6220a4ba)

Fill(フィル)の Gradient(グラデーション)ツール

パフォーマンスの改善

全体的にグリースペンシルが可能な時に複数のスレッドを使用するようになりました。ハードウェアと利用可能な CPU コア数に依存し、グリースペンシル内のモディファイアーの実行などの多数の処理が高速化することが期待されます。

ファイルサイズの改善

グリースペンシルデータが非常にコンパクトになりました。これは大幅なファイルサイズの減量につながる可能性があります。また、読み込み時間の短縮にもなり、Undo(元に戻す)の速度も改善されるでしょう。

下記はいくつかのテストファイルでのディスクサイズの比較です(Compress(圧縮)オプションで保存):

テストファイル Blender 4.2 Blender 4.3 変化
Pirate(Sergi Miranda 氏作) 158.8 MB 64.4 MB 約41%に縮小
Picknick(Susanne Weise 氏作) 147.3 MB 42.8 MB 約29%に縮小

その他の変更

  • Draw Mode(ドローモード)中のツールが並べ替えられました。プリミティブツールは一つに、ドローツールの一部は最初のセクションにまとめられました。

Draw Mode(ドローモード)のツール

  • Trim(トリム)ツールが、同じストロークで一度に複数のトリムができるように。

  • 3Dビューポートの右上のレイヤーの選択のポップオーバーがトップバーに移動しました。

ドローモードのトップバー

  • Canvas(キャンバス)オプションが Object Data(オブジェクトデータ)プロパティに移動しました。現在3Dビューポートのオーバーレイの一部になっています。

  • グリースペンシルオブジェクトをアーマチュアに Envelope Weights(エンベロープのウェイトで)オプションでペアレント可能になりました。

変換と互換性

4.2以前で作成したグリースペンシルオブジェクトは、ファイル読み込み時に自動的に新しいアーキテクチャに変換されます。後方互換性はありません。4.3以降で作成または保存したグリースペンシルファイルは、4.2以前では正しく読み込みできません。

Blender 4.2以前に作成したファイルは4.3で開いた時も見た目はほぼ同じです。下記の違いがあります。

  • 「Noise」(ノイズ)モディファイアーのノイズの結果が違うかもしれません。

  • 複数の「Time Offset」(タイムオフセット)モディファイアーが使用されている場合、4.2とはスタック内の(他のタイムオフセットモディファイアーに対する)順序による挙動に違いがあるため、結果が変わる可能性があります。詳細はこちらのコメント(英文)をご覧ください。

Adjustment Layer(調整レイヤー)

Blender 4.2の Adjustment Layer(調整レイヤー)は、レンダリングの前に適用されていました。4.3ではモディファイアーの評価前に適用されるようになりました。つまり、モディファイアーが調整レイヤーによる変更を利用できると同時に、評価後のジオメトリがこれらの変更の影響を受ける可能性もあることも意味します。

4.3より前に作成されたファイルの見た目を同じにするには、調整レイヤーをモディファイアーに変換(してスタックの最後に)し、デフォルト値にリセットしてください。

Thickness Scale(幅のスケール)

Blender 4.2のグリースペンシルデータには "Thickness Scale"(幅のスケール)設定(Python では pixel_factor )がありました。この設定は4.3ではもうありません。

4.3より前に作成されたファイルの見た目を同じにするには、この幅のスケールをモディファイアーに変換し、スタックの一番最後に置いてください。

廃止予定の機能

4.2に存在していた一部の機能が削除されました。これは大半がアーキテクチャ内の変更と、保守が困難な事が原因です。

スクリーン空間のストローク幅

ストロークが常に "World Space"(ワールド空間)の幅モードになりました。"Screen Space"(スクリーン空間)オプションはもう利用できません。同じエフェクトはジオメトリノードモディファイアーの使用で再現可能です。詳しくは 移行プロセス(英文)をお読みください。

Interpolation(補間)ツールの選択順序

補間するストロークのペアを指定するのに使用されていた(編集モード中の)選択の順序が削除されました。この機能の移植は簡単ではないため、将来のバージョンで置き換えられることが決定しました。

ドローイングガイド

ドローモード中のガイドは4.3では移植されませんでした。複数の継続的な問題があり、これらがバグを増やさずにコードを変換することを難しくしていたからです。将来のリリースでもっと高性能なシステムで置き換える予定です。

カーブ編集モード

編集モードでは、選択中のストロークをベジエカーブに変換する「カーブ編集」への切り替えが可能でした。この機能がストロークの Curve Type(カーブタイプ) に置き換えられました。編集モード中、ストロークのカーブタイプを Set Curve Type(カーブタイプを設定)オペレーターで変更できます。詳細はマニュアル(英文)をお読みください。

Python API の変更

グリースペンシル用の Python API も新しいデータ構造に対応すべく書き直されました。自作アドオンを4.3に移行したいアドオン開発者は、python 移行プロセスページで詳細を確認してみてください。